─ エントランス ─[落ちた拍子に右半身を床に打ち付けた。短剣を手放さなかったのは執念に近いだろう。切り裂かれた紺の袖からだらだらと零れ落ちる紅は、服と床の両方を濡らしていく]───いてぇ……いてぇよぉ…。[傷が痛むのか、心が痛むのか。どちらなのかも分からない。呟くように言いながら、もがくようにして僕は身体を起こした。跳ね飛んだ紅が左の頬骨辺りへと付着し、まるで血の涙を流しているような軌跡を作る。右目からは透明な筋が幾本か、目尻を伝い零れていた]