─ 雪原 ─
[刃がどこにどう突き立ったか、なんて、知らない。考える余裕もない。
自分がどうなっているか、よりも、今は目の前の月のいとし子に意識を向ける]
……そんな話、どーでも、いい。
[零れ落ちるのは、こんな呟き。
右手からは力を抜かない。ただ、食らいつく意志が、そこにはあって]
……俺は。
いや、俺だけじゃなくて、誰も。
諦める事はしない……。
……『運命』に飲まれて、押し流されるだけのひとたちじゃない、って。
しんじてる、から。
[掠れた声で紡ぎつつ。睨み付ける赤を天鵞絨で見返す。
そこに宿る色は、静かだった]