[夜はまだだというのに、人間の姿を保てない。
だが……力も身体へと満ちる。]
ふふふ……そうか、確かにお前の言う通りだ。
[レナーテは口許をまるで三日月のように歪めて笑うと、]
ライヒアルトだけに聞こえる声で言葉を放つ。]
───皆殺しだ。
[左腕に銀の十字を突き立てながら弾けるように走り出す。
反応ぐらいはできた者もいるだろう。だがレナーテの動きはもはや人のそれではない。
疾走する姿はまさに獣、狼にごとき速さで、地面に落ちた小さな小袋を踏みつけて標的へと迫る。]
我が爪、我が牙、獣の力
何の能力-チカラ-も持たぬ人間-オマエタチ-に防げるものか!
[その凶刃が向かう先は
───イレーネ!]