─ 翌朝/自衛団詰所裏路地 ─
[何が起きたかわからない。
否、わかっている。けれど、認めたくない。
崩れ去った日常を前に、そんな思いがぐるぐると回る。
自衛団員が交わす怒号が耳に届く。
けれど、意味のある言葉としては、入ってきてくれない。
どうしよう、どうすれば。
そんな思いを打ち破ったのは、肩を揺すられる感触と、ここから離れるように、と促す誰かの声。
黒珊瑚亭で待機しているように、と指示を出しているのは、自衛団の副団長だったかしら、と。
そんな事をぼんやり考えながら、促されるままに立ち上がる]
……ぁ。
[立ち上がる途中、再び視界に入る亡骸の周りに、白い色の何かが見えた、と。
思った直後にそれは消え失せ──入れ代わるように、灰色だった視界に色が戻る。
目まぐるしい変化、その意を考える暇も、座り込む事で汚れたスカートを気にする余裕もないまま。
促されるままに、黒珊瑚亭へ向けて歩き出した。**]