―聖堂・外―
[後ろから雪を踏む音が近付いてきたのは聞こえた。
反応を返せる程の余裕は無く、乱れた呼気を繰り返すばかりで]
[それでも声を掛けられれば、殊更にゆっくりと頭を巡らせて、苦笑する]
……だいじょ、ぶ、……じゃ、ない なあ。
[大丈夫だと言ってもそうとは一切見えない自覚はあった。
躊躇いなく掛けてくる声とその肩の心配げな蒼の様子>>88に、安心させられるような言葉を紡ぐことはできなくて]
[そこに、落ちてきた言葉>>90。
見上げれば随分と不機嫌そうな色合いがこちらを見下ろしていた]
……ほんと、に ねえ……
[無理矢理に零した笑い声は酷く乾いていて。
それに情けないような、困ったような苦笑へと移り変わる。
差し出された手には素直に右手が沿ったけれど、未だ収まらぬ痛みに立ち上がることはできない]