─中央ビル入り口外─
[外へ出ると女性から声を掛けられた。
微かな残香を感じ取り、黒瞳に深紫の光が走る。
淫靡なだけではない気配が伝わってきて更に目を眇めた]
…こんばんは。
私は喫茶「夢見る魚」のユーディット。
こちらこそどうぞお手柔らかに。
[声だけは穏やかに、右手を胸に当て挨拶を返す。
名乗ったのは表で通りの良い名前。裏の顔を知らなければ用心棒風情がと思われるかもしれないが、侮ってくれるならそれはそれで都合が良いので構わない。
それとない動きで一定の距離を保つような位置を取り続ける]
お名前をうかがっても?
[十字架を背負っているなら聞かずとも知れようものだが。
それでも敢えて問いかけた]