伽矢。 それに……良かった。[駆け寄ろうとしたけれど、伽矢の前には私だけが通れない壁があった。黒江さんが何か呟いている。きっと、おまじない] 千恵ちゃん。 もう一人で走り出しちゃ駄目。 お願いよ。[姪は私を煩く思っただろうか。けれど、言わなくては。普通の状況じゃないのだから。顔を上げた伽矢が目を潤ませ、ほっとしたような顔をする。この子のこんな表情、いつぶりに見ただろう。人前で強がる姿は、若い頃の旦那とそっくりだった]