[結局、未だ部屋を見繕う気にもならないまま。
かといって厨房の方の気配に気付いて
手伝いに行くなどということもしないまま。
新しく来た気配の主に、ゆるりと目を向けた。]
あぁ、アリョール。
不憫……と言っていても仕方ないんだろうけれど、ね。
[淡々とした声でそう零して、彼女>>92を見送った。
ナイフを手に取る様に遠慮がないように見えても、
あからさまに目を伏せたりはもうしなかった。
自分だって結局はそうした、ということもある。]
……彼女のように迷いなくあれれば。
少しはこんな空気も、耐え易くなるのかな。
[さらに微かに零した声は、もうアリョールの姿が見えなくなってから。]