─ 自宅 ─…にしても。痛い所、ついていったわね。[持ち運びが楽な様にと、結び目で持ち手を作りながら先に出ていった男の捨て台詞を思い返す。婚約者に逃げられた女。正しくもあるが間違いでもある自身のレッテルは、今も尚両親にとっての汚点であり、娘に対しての後ろめたさを抱かせるものなのだろう。娘の家庭教師でもあった若い画家──彼に今後も援助を望むならと破棄を迫ったのは両親だから。けれど、それはお門違いな話だと娘は思う]