―翌朝 広間―
[広間へと行く前。
クロエから話が聞けていれば、彼が蒼花だったことを聞けたか。
祖父から聞いた『生け贄』、というのは正しかったのか。
絶望に似た思いが少女の中に拡がるものの、エーリッヒと交わした約束。
様々な事に埋もれ押し流されかけていたソレを思い出し、支えと希望として奮い立たせる。
エーリッヒの違和感は気がついてはいる。
しかし、それは祖父の死や、そこから起きた様々な出来事でそうなってしまったのだ、と、少女は考えて。
少女の表情は昨日浮かべた感情のないものとは違い、
覚悟や決意に満ちたものが浮かんでいる。
その想いに呼応するかのよに、ツルバラは両腕へと伸びて花を咲かせていく。]
[少女は知らない。
自身に受け継がれたものは、蒼花が『場』にあれば朱花に。
朱花が『場』にあれば蒼花に変化する性質をもので。
両親も祖父と共に『場』に巻き込まれ。
母親が蒼花に目覚め、その末に人狼に喰われた事を。]