─ 自宅 ─
…お父様達が何もしなくても、あの人に結婚までする気は無かったし。
[きっと彼はパトロンである両親からより多くの援助を得る為に、私を利用したかっただけだ。
それを見抜けなかった私が一人熱を上げて婚約なんて話になって、引くに引けなくなっただけだった、と。
事実、両親からの反対を受けたあの人は、見るからに安堵した顔で婚約破棄を申し出ていた。
今も覚えている。
離れるのは嫌だと、好きなのにと言い募る私に、向けられた冷たい視線と]
『画家気取りのお嬢さんのご機嫌伺いは、もう終わりだ』
[別人の様に冷めた声で、投げ捨てられた言葉を]