[暫くそうして、落ち着いたとは言えなかったけれど、涙は止まった]
[アーベルに手を貸して貰い、立ち上がる。
広間を見た。自分の起こした事の、後を片付ける人々がぼんやり映った。
開きかけた口から音は洩れず、謝罪の言葉は紡げなかった。資格は、ないような気がした。首を左右に振り、小さく頭を下げる。
そのまま、項垂れるようにして、彼に連れられて、階上に向かった]
[カァ。]
[薄闇の中に飛来するその姿はよく見えなかったが、声でわかる]
……ザフィーア?
イレーネのところ、いたんじゃなかったの。
[繋いでいない手を持ち上げようとすると、左肩に停まる。
その意図は、なんとなくだけれど、伝わった]
ん。
[微かに頷いて、部屋まで辿り着く。
アーベルとは、そこで別れた]