[飛び込む刃を大きく動いて避けはしなかった。
否、避けたなら、自身も制御を失する。
刃を舞わす、銀煌乱舞。
糸を用いる力の中でも、それは最も強い集中を必要とする技だから。
何より、糸の長さは本来よりも短い。
動けば、標的を捉えきれぬから、と]
……くっ!
[最低限の動きで急所は外したものの、完全には避けきれず、突きが脇腹を掠める。
痛みよりも、衝撃に息が詰まるが、集中は解かず]
……Schneiden Sie es!
[再度の鋭い声、それに応じて、糸は電子を物ともせずに飛び込んできたティルへと向かう。
銀の糸は、舞うように、その刃を振るい。
遅れて舞う紅が、大気を飾り立てた]