―宿屋:食堂―
[ロミがハンカチを抱きしめる様子に、その感謝の言葉>>59に
ゲルダの表情がやわりと、微かに緩む。
そっとゆっくりと動いた手が ロミの肩へと触れ、
小さく横へと流れたのは、そこに埃でも見着け落とした風。
なんとなく気恥ずかしい様子でノーラへと視線向けられぬまま
暫し 周りの言葉を何気なく聞きながら腹を満たしていると
ふと 視線は黒いローブへと留まる。
何となしに見て居れば 扉から入ってきてそちらへと歩み寄るのは
同じ集合住宅に住む青年の姿で。
彼の言葉に、周りの村人たちがざわめいた。
それへと向けるゲルダの視線はいつもと変わらず――
岩の隙間から落ちる雨の勢いは衰えず。
部屋は空いていますからという宿屋の女将の言葉に甘えて、
その夜は整えられたベッドで 眠る事にしたのだった*]