―東の泉―
[烏天狗の眸が瞬くのを見て、じっと見ていたことに気づいたように、ああ、と呟く]
私が住んでいる地域ではあまり黒い羽や髪を持つ人はいませんから、つい珍しくて。
[すみません、と軽く謝り。
木々を振り返りながら黒江が告げる言葉に小さく頷く]
ええ、ほんとうに――
とはいえ、ずっとここでのんびりしてると、今度は人間界を見に行きたくなったりもするものですから。
結局はどちらも好きなんでしょうねえ。
[くすっと小さく笑い。
烏天狗が飛び立とうとする様子に朱色の眸を細めて笑んだ]
ええ、それではまた、大祭の会場でお会いしましょう。
[見事な黒羽を広げて飛び立つ姿を見送り。
それからしばしの時が過ぎる。]