─ 二階・客室 ─
[それから、どれ程の時間が経ったろうか。
目を覚まして鼻をついたのは、微かな鉄錆の臭い。
どこから、と考えるより先、自分のものではない赤に染めた服を着たままなのに気付いて]
…これは。
着替える前に、洗った方が良さそうかな。
[部屋の外からの臭いを、着ている服に染み付いてしまったのだと勘違いして。
扉の鍵をし忘れている事も頭から抜けたまま、身に着けたものを全て外して浴室へと入り]
…早く、武器を取りにいこう。
こんな所で、死ぬ訳にはいかない。
生きて、此処から出るんだから。
─ 私が、「私」として、生きた時間を得る為に。
[身体を洗う水音に紛れる事無く、落としたのは決意秘めた呟き]