[ひとしきり騒いだのち、咳ばらいを一つ。]
……それで、結界じゃっけ?
通りで妙な感じがするはずじゃのぅ……ちょっと待っておくれ。
[誰にともなく断りを入れると、両腕から力を抜いて俯き加減になった。ぱき、と乾いた音がした直後、ローブの裾から幾本もの太い木の根が飛び出して地面に突き刺さる。自らの足元、泉のほとり、お菓子の木の傍と、刺さった根は土の深くに潜り混み、地中を這った]
――…ううん、
屋敷全体にお菓子の生る木ちゃんの力が行き渡ってるみたいじゃねえ。ちょっと弱ってるけどアナちゃんの気配は感じるよぅ。
でも、結界を破るには骨っちゅーか根っこが折れそうじゃ。
[直立不動、足元を膨らませた状態で言葉を並べ、しゅるしゅると音を立てて木の根を収めていく]
お菓子の生る木ちゃんはお腹が空いてるんじゃよねぇ。
なら、お腹いっぱいになったら出してくれんかのぅ……。
他人の魔力が栄養なら一人から全部吸うんじゃなくて、皆から少しずつ分け与えるとか。
[駄目?とばかりに小首を傾げて木を見遣るも、木は沈黙を保っていた]