[火が触れた壁を振り返る余裕など、彼女にはなかった。
しかし、もし微かに雪の残る屋外であれば
火が通り過ぎて尚残雪が見られる事に疑問も覚えられただろう]
貴女は、誰。
あの時と、違う――何か、違う。
[闇夜に火球は浮かび上がるように。
複数の火球を一つ、二つ、身を翻し交わしていく。
避け損ねてバランスを崩した次の瞬間、迫る橙。
落ちるに身を任せ、畳んだ翼を掠める熱]
護るためなら――戦う。
貴女が私から奪うつもりなら。
[地上すれすれで、翼を展開。
膝で衝撃を殺し、着地した足は地を蹴り低い姿勢から
再度舞い上がる。
まがい物ではない冷気を帯びた翼は、上空から
ブリジットに狙いを定め鋭い刺突を繰り出した]