[悲鳴はあがらない。
物音に、目を覚ました人物はいたかもしれない。
呼吸が途絶えたことを悟ると、少年は修道士の傍を離れて、玄関の外へと出る。以前より遠巻きに集会所を見張る、自衛団の姿が見えた]
……新たに、犠牲者が出ました。
それとは別に、容疑者の一人の処分を。人狼かは、判明していませんが。
遺体の検分と処置を、望みます。
[まだ幼さを残す、なのに淡々とした声が紡がれていく。
犠牲者は機織りの女性、容疑者は流れの修道士。死者の情報を口にする少年の普段との違いにたじろぐ彼らを見据える瞳は、血の赤よりもずっと、深かった]
――次期村長、フォルカー・アルトマンとして命じます。
早急な、処置を。
[有無を言わせぬ気迫を持って言い渡し、フォルカーは集会所の内へと戻る。
浴室で「汚れ」を洗い落とす少年の目に、*涙はなかった*]