―朝/宿屋/個室―んっ……―――[カーテンから緩く差す日差しを、瞼越しに感じて目覚める。飲んだ薬が効いたのか、胸が痛むことはなく、そのことにほぅっと息を吐く。妻は流石に寝台の淵に凭れるでなく、傍らにあっただろう。ゼルギウスが寝る前とは真逆、今度は夫が妻の頬に掛かる髪を梳いた。幼い日、遊んでとせがむ彼女に、外で遊ぶことが叶わない身故に、本を読んで聞かせることが多かった。時には気がつけば、どちらかが寝落ちてしまいこうして寝床を共にすることもあったか。そんなことをふっと思い出す。]