― ドルージュ家屋敷・廊下 ―
は。……お嬢が?何かの間違いでしょ?
無理無理、お嬢に人殺しなんて。俺じゃないンだし。
[とか軽く言うと、普段なら「お嬢ではなく、お嬢様と呼べ」「馬鹿を言うな」などと怒鳴られる所が今日は「まったくそうだ」と激しく同意された。その通りではあるので、そこには特に突っ込まなかったが。]
フーン、しっかしまぁ、お嬢も……って。
あ、いや何でも。
それじゃ俺は用事があるんでコレで。
[“も”の部分は耳聡い執事にしっかり反応される。
面倒になる前に言葉を切りそそくさと屋敷を出ようとするが、寒さに痺れを切らした自衛団員が出入り口の方で「おい、アーベルまだか」と探し始める声がここまで届いて顔を顰めた。]
あンの馬鹿、もう少し我慢してろって――
[自分が待たせたのが原因なのだが、それは棚にあげ軽くぼやくと当然のようにヴァルターから追及され、降参と言う様に両手を挙げた。]