―― 手洗い場 ――
[一度止まってしまうと、なかなか動けなかった。
あの留学生を吊ったとき、捻った足首がじんじんと痛んでくる]
……行かなきゃ……
[呟く。でも、中に沢山人がいて、拘束されたら。
吊られたら。そう、思う。
何より、あそこで、私はあの留学生と話をした。
自己紹介をした。外郎をくれた。食べてないけど]
だめ。やめろ。思い出すな、私。
[震える声で耳をふさいだとき。
パソコンルームの扉が開いて、中から一人、出てきた。
こちらは入り口から死角だったのだろう。
彼女はこちらに気付かず、どこかに向かう]