[やがて集まる、人の声。真っ先に近づいてきたのは、幼馴染のそれだった]……琉璃、か。[小さく、名を呼ぶ。気を許せる数少ない相手の姿に、多少、緊張が緩んだか。声は、微かな震えを帯びていた]……綾が、桜に。……俺、は……。[続く言葉は、途切れ。綾野を家へ、と促されたなら、ふらつきながらも立ち上がる。手を貸すかと問われても、それは拒絶し。ざわめきの中、軽い身体を抱えて櫻木の家へと向かい。伯父に、従妹を託した所で──記憶は、途絶えた]