─ 実験室 ─
[様々な装置が置かれた実験室に足を踏み入れる。
左手に生々しい表情を浮かべたまま立っている石像の側を通り、ぐるりと巡回。椅子に座って脚を組み、机の上に外したタイピンを置くと、疲労感とこみ上げる感情に少し目眩を感じた。深い息をついて、目を閉じる。
目覚めてからの様々な事柄が、冷凍装置に入る直前までの記憶が──走馬灯のように目裏を駆け抜けた。
ヘルムートの抑制バンドはシャツの襟に半分隠れている。
上等の生地のシャツ越しを少しだけはだけ、数値を確認した。]
──9%か。
このバンドはもっと増産出来たはずだと、
改良版を作る事も出来たはずだと、
私は当時と変わらず>>3:393、今でも信じている。
あの予算編成はおかしかった。
新党に移った直後に刺された──殺されかけたこの脇腹の傷が、何よりの証拠だとも。
[刃物が皮膚を突き破り、筋繊維を裂いてめり込むあの嫌な感触。あの時は、痛みと言うよりも、ただ巡りあふれだす己の血液の熱さに驚いた。恐怖、混乱、衝撃が無かったとは言えば嘘になる。]
私が、あのエールラーの息子だったから、
警告だけで済ませるつもりだったかもしれん。