― 二日目/夜 ―[部屋を出て廊下を歩む。エーリッヒの部屋の前までくると立ち止まり人気が無いのを確認してからアミュレットの紐をドアノブに括りつける。継ぎ目のあたり目立たぬように施す細工。父から教わったまじないを口ずさんだ]……一人で泣くなよ。[泣き出しそうなあの表情がちらつき立ち去り際に零す言葉。微かな響きは宵闇にとける。細工は夜の間そこにあり、早朝になればまた持ち主の手許に戻った]