[アーベルに尋ねたにも関わらず、即座に答えが返ってきたのはベッティの方。
紅は瞬いて、視線を蒼から逸らし彼女を見る。
全てを嘘だとは思っていないけれど、引っ掛かりを覚えるのは
ベッティがアーベルを庇う言葉であったから。
もし、違う誰かを庇う言葉であったなら、ゼルギウスはまま信じたであろう。
顔に浮かぶのは本当にうっすらとした、2人に悟られるかどうか怪しいくらいの微苦笑。
――……愛する人の為に、嘘つくことは識っているから。]
そう。アーベル君も、それでよいのかな?
[再び紅は蒼を見て、首を傾げて見せた。
掘り下げてしまえば、突っ込める違和感はあるにはあるのだ。
見回りに来たとしても、反応がないと部屋に入るには早すぎる時間。
そも、皆の安全を確かめたとするならば、他の部屋にノックがなかったのは可笑しい。
アーベルも是と謂うならば、その辺り突っ込む人はいるのだろうか。
ゼルギウスはそこまで考えてでなく、けれどまるでそれを示唆するように蒼に無言で問いかけた*]