─ 広間 ─
[ぐるり、人が集まってきた広間を見回す。
朱花を宿せし『神の使徒』として、『闇の眷属』を討ち滅ぼす。
その意思は揺らがない。
けれど、仮にそうだとしても、傷つけたくない者も、いる。
姉と慕うひとは言うに及ばず。
明るい気質の友と、旋律紡ぐ時を幾度となく共有した者と。
幼い頃に、強く響くものをくれた者たちは、あらゆる意味で、大事で、大切で。
失いたくない──と。
そんな微かな願いを紡げば、首筋に熱が走る]
……ああ……。
[そういう事か、と。
ようやく、思い至った。
ここに来てから感じていた息苦しさは、使徒としては甘い考えに対する『戒め』だったのだと]