― 昨夜/宿屋 ―
[それきり娘は言を喪い、カルメンが運ばれ終わり喧騒が鎮静化するまで廊下前で佇んでいた。何より――ミハエルがカルメンを手に掛けた事がショックだったのか、傷心を隠せず、誰に対しても泣きそうな顔をしていた事だろう。]
……なんてクロエに言えば好いのだい?
[有様を彼女に伝えるのは、酷く酷な気がして。
死んだ者の想いが解る幼馴染を案じる様に呟かれた。
アーベルが独り言ちを呟くのを聞けば頸を傾ぐが、
返答は得られる事は無いだろう。]
…アーベル君?
[謝罪を口にする青年を見やり娘は不思議そうに蒼の青年を覗う>>128*]