[有利に間合いを詰められないならば、うかうか相手の間合いに留まるほど危険なことはない。
首元と胸へ腕を交差させて風を受けながら、大方離れたところで腰を反らし宙返り、後方へ苦無を飛ばす。
カカッと音を立てて突き刺さるは訓練所の壁。
下側とはるか上の2本。
膝を曲げて両足で壁に着く。
刺さった苦無に片足をかけ、伸びやかに飛び上がり、旋風の渦を抜け出した。
3階ほどの高さに刺さったもう1本に手をかけると、さらに体重をなくしてぶら下がる。]
間合いは私の方が広そうだからな。
[常ならもっと観察するが。
久方ぶりの美結とのやり合いにテンションが上がり、好戦的になっている己を自覚している。
多彩な属性魔法。
攻撃と防御の合わせ技。
特に防御に関して美結が上手だと思う。
自分はそういう魔法の使い方が苦手だし、軽さを追い求めてボディアーマー以外の防具も着けていない。
さて、どうやって崩そうか――。]