─湖畔エリア─
[走りこみ、初撃はフェイントのように真横を抜けた。
攻撃の手がないのを見ると、どうやら向こうは逃げずに迎え撃つ体勢らしい。
唱える言葉の意味は分からないものの、さぼてんが使う魔法なら、土水樹のどれかな気がした。さっき風を使った気がしたが意識の隅に置いておく。
ならばとこちらも、唱えておいた詠唱を完成させる。
振り返ると同時に、金ではなく黒い文字が2つ、空中に浮かび上がった。]
『 チノソコニネムルゲンシノホノオ ミドリナメルアカキシタトナレ 』
『 セイセイルテンナスゲンリュウ アカヲマトイテアマカケリ 』
[紡ぐのは古代語ではなく、上位古代語。一つは赤い渦を、もう一つは無色の渦を作りあげる。
水属性が支配するエリアで火を使うのは厳しい。使えたとしても、威力は普段より数段落ちるはず。よしんば炎が届いたとしても、向こうも何かしらの防御手を打っている。
故に手加減せずに、風に煽られ勢いを増した全力の炎をティルに向けて叩き込んだ。]