─ 厨房 ─
[厨房に入ると、いつものように竈の火を熾す所から始めて、お湯を沸かす。
用意するのはいつものお茶と、それから、気持ちを鎮める効果を持つハーブティ。
春から夏の間に育てたハーブを乾燥させて作ったそれは、老尼僧から教わったもの]
……結局、追いつけないままだったか、これも。
[どんなに比率を変えても、老尼僧の手になるものとは味わいが違っていて。
何故、と首を傾げていたら、『気持ちが足りないの』と言われたのは覚えている。
その意味を問うても、ただ、穏やかな笑みしか返らなかったけれど]
…………。
[ふる、と首を横に振り、想い出の欠片を一時追いやって。
気を紛らわせるように小声で願い歌を口ずさみつつ、お茶の準備に意識を向けた。**]