[濃い血の匂いの中心に義兄は居た。
肉を抉り取られ死の香りを纏う義兄とその躯を抱くおとうと。
ヒク、と喉が引き攣るような感覚]
…………ぁ。
[小さく漏れる声]
おにい、さ、ま。
[深い傷痕と血だまりを見れば義兄が既に事切れていることを知れるが
それを受け入れる事が出来ずに名を呼んだ。
覚束ない足取りでふたりの傍へと行けば
ライヒアルトの少し後ろでぺたりと膝を折る]
おにいさま……、おにいさま……っ!!
い、や……、どうして……、……ッ
[いやいやをするように頭を振るい
やがて女は顔を覆って泣き崩れる]