― 初日夜/黒珊瑚亭―………。[その日の夕食は着いた日と同様、肉ではなく魚介類を注文し。早めに自室に引き取って、荷物の中から、黒い羊皮紙の分厚い研究書を取り出した。パタパタと頁を繰れば、最初の辺りに現れるのは、人体と―――『狼』と思しき毛のある四足動物、2体の装色された解剖図。比較可能なよう、部位ごとに隣合わせに並んでいる。翳りを帯びた瞳で、暫くそれをじっと見つめて、ポケットの中の紅珊瑚の指輪に手を伸ばした]