[島の中の、森の中の、湖の中。 島の護りたる樹はそこに在った。 此岸から、彼岸――中央に生える樹を見る。 闇に覆われて、今は、色は見えない。 夜と同化するように、静かに佇んでいた。 平坦な道とは言え、 歩みのみなれば、多少の距離も遠くなる。 辿り着いた頃には、白い頬は朱を帯びていた。 付き人の男に近づくなと言われたこともあったが、そうでなくとも、触れようとするには、飛ぶのでなければ、湖を泳いでゆくしかなく。 人目につくのは免れそうもなかった]