人狼物語 ─幻夢─

83 血塗れの手


ベルナルト

[ベルナルトの身が人のそれであると判るのは、
 死の香り知る者と、本物の人狼たちくらいかもしれない。
 香に中てられずとも、己が人狼でないと確信できなかった。
 「綺麗な髪」を意識する度、そんな不安が過っていた。
 それでも結局、ずっと何処かで求めていたのは――。]


 イヴァン。
 やっぱり、僕は綺麗に見えるかい。

[さっき彼の指先が、物言わぬ骸の髪に
 伸びていたのもまた、見えていたから。
 何時か長い髪に向けられた眩しげな表情も、
 それに気づいた己への瞳の揺らぎも忘れていなかったから。]

 触っても、好いよ。
 幽霊が幽霊に触れられるか、判らないけれど――。

[髪を撫でて欲しい、と素直には言わないまま。
 イヴァンの手を己の髪に促そうと、彼に手を伸ばした。**]

(139) 2013/05/02(Thu) 15:04:33

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