[事態がある程度落ち着いてくれば、広間にいる人に挨拶をする余裕くらいはできた。ボクは相変わらず“キリル”と名乗って、同時に名乗られる名前を頭に叩き込む]声?……あ、そう言えば。[話題に上がった“空耳”の話。大雨が降り出したり転んだ所為で、すっかり忘れてしまっていたけれど、ボクにも覚えはある]おいで、とか、お帰り、とか……そんな感じのなら、アタシも聞きましたけど。[だからそう口を挟んだ。その声が先程の女主人のものに似ていただとか、そこまで考えは至らなかったけれど]