[イレーネの言う事は、誰よりもわかっている。それが自分の力なのだから。]
墜ちて、失って、無くなって。
強がりだとしたって、それでも、わたしは、
また、死にたくなんて、ない――いきていたい。
あの寒い世界は、嫌!
[一度、恐怖に負けた心は弱く。
小刀を振るい、地を蹴り、されど、牙を避け切る事も、受け切る事も叶わない。緋色が舞う。痛みに恐怖は呼び起こされて、足がもつれかける。
されど、この「世界」の中では己の紡ぐ言葉こそが、真実となる。]
――炎よ、解けて、溶かしつくして、
消えて、無くなってしまえばいい……!
わたしは、まだ、消えない!
<炎は形を変えた。蛇ではなく、鳥へと。
白い翼を打ち払うのは、朱き羽根。
自らの体温も、上がっていく。熱い。制御が効かない。
虚実と現実が、混ざり合う>