―湖畔エリア―
きゃいん!
[狼は耳は鋭い。可聴域も人の3倍以上はある。
ティルの叫びは耳を直撃し、脳を揺らした。一瞬ふらりと気が遠くなりかけよろめいたものの、倒れる寸前羽根を動かし四肢を踏みしめ、その場に耐えた。
視界だけは、意地でティルを捉えたまま外さない。
放った炎はやはりこのエリアでは部が悪いのか、水の壁に遮られ相殺されるように消えた。代わりに周囲に濃厚な霧のような水蒸気が立ち込める。ティルが動いた様子は、ない。
ふらつく体を何とか動かし、よたよたと大回りして、背後から近づいた。
ティルが気づかなければ、その鼻先をぺたりと体に付けるだろう。]