…、よし。[音が、止まった。表情崩さぬまま、職人──クロエが、低く呟く。出来を確かめるようにして、細工を指に持ち上げた。丁寧に削り滓を払えば、繊細な装飾が浮かび上がる] 出来た。[目の高さに作品を持ち上げ、検分していた職人の口から、ほっと長い息が零れた。満足に、ようやく少し表情が緩む。微かな笑みを目に浮かべて、クロエは背を伸ばした]