[この村を出たのは16歳の時。
ウェンデルに負けず劣らず悪ガキだった少年のクレメンスは、外への憧れが強く、家出同然で村を飛び出した。
様々なことに首を突っ込み、色々な仕事を渡り歩いて。
結果、妹がミハエルの父に見初められたと前後する頃、左腕に囚われの烙印を押された。
それまでは年一回の割合で妹と手紙のやり取りをしていたのだが、烙印を押されてからは手紙を受け取ることは出来ず。
それが何年も続いて、囚われる前から縁のあった好事家に買われる形で外へと舞い戻ったのが今から14年前のこと。
連絡の取れない数年の間にも妹は手紙を出していたらしく、保管していてくれた好事家から数通を纏めて受け取った。
1通目には、貴族に見初められたことを相談する内容が書かれており、困惑した様子が見て取れた。
当時妹には婚約者が居たのだから、無理もなかったことだろう。
その時相談に乗れなかったことを、激しく後悔した。
それ以降の手紙には、見初められた貴族と結婚したこと、娘が産まれたこと等が書かれていて。
連絡が取れないにも関わらず、年に一度、クレメンス宛に手紙を書き続けて居たようだった]