[犬を撫でながら、手近なアルコールの瓶を手に取りラッパ飲みにする。]
人狼を中途半端に囲い込んで野放し。
あたし達は容疑者だから、誰が人狼の被害に遭っても仕方ないってか。
かと言って皆殺しにする勇気はまだ無いってトコ?
ああ、駄目ね。
親父が過去の人狼事件を知ってたみたいだから、何か記録でもと思ったけど、あの人、自分の名前しか字が書けないんだったわ。[そんな事も忘れちまうなんて、と呟く。]…ママがいたらいざ知らず。
[キャロルの父親は老人と言って良かったが、母親は違っていた。キャロルを長く学校へ行かせたがったのも母親で。随分歳が離れた夫婦だった。
イザベラ先生はお元気でいらっしゃるだろうか、と一瞬考える。このなりで会いに行こうとは思えなかったが、キャロルは当時それなりに悪く無い生徒だったはずだ。先生の事は結構好きだった。
──風が窓を叩く音が冷たい。
嘆き島と呼ばれる墓ばかりが並ぶ寂しい島が見える。]
ママのお墓には、親父と一緒に行くつもりだったわ。だから、まだグレンの所にも行けてなかった。グレンの話をしたら、やっぱりお前はあの幼なじみと出来てたんだろって、殴られるんだろうけど。