……そういやァ……あんときは、人狼に見せかけた、ただの人殺しだったなァ……
[本のページで記憶が刺激されたか、アーヴァインと知り合った事件を思い出して小さく呟く。
人狼を騙った人間の為業はわかりやすい。
なぜなら、人の力だけではどうやっても人々を閉じ込めるなんてことはできないのだから。
外との交流が途絶えていもしないのに、起こった惨劇。
アーヴァインは伝承に詳しいようで、人狼騒ぎではありえない点を指摘して逆うらみから殺されかけていた。
それをたまたま通りかかって助けたのがきっかけと言えばきっかけで。
当時は真面目に働いていたから、屋敷への誘いはいつか、と断り。
――それから数年後、飲んだくれてやってきた男を、アーヴァインは快く迎え入れたのだった]
あんときから、かわんねェなァ……お人よし加減も……
[二ヶ月、居座っても未だに理由の一つも聞かないアーヴァインを思い返して、小さく笑みを浮かべ。
ウイスキーをあおって、しばらくの間、自室にこもっていた]