[全ての手紙を読んだ直後、クレメンスは妹に1通の手紙を送った。
長く連絡をしなかったことの謝罪、結婚と出産に対する祝辞。
そして、もう連絡を取り合わない方が良いと言う、別離の言葉を手紙に綴った。
理由の詳細こそ書かなかったが、貴族に嫁いだ妹に自分は兄として相応しくないと言う内容を書き添えた。
聡い妹ならば、それだけで大体のことは察しただろう。
それだけ、昔のクレメンスの素行は悪かったのだ。
自分のことは死んだことにしてくれ、とも書き添えたが、妹がどうしたかは分からない。
差出人の名は「K」とだけ記し、それ以降、妹から手紙が届くことは無かった。
12年前に村に戻った時、クレメンスは村の旧知の者達に自分と妹の関連についての口止めをした。
余計な迷惑をかけたくないからと言うのがその理由だった。
旧知の者達も妹には好意的だったし、クレメンスの素行の悪さも良く知られていたため、その願いはどうにか受けて貰えて。
新たに村に来た者や産まれた者には伝わらないまま、今に至る]