[攻防は、体格で勝るイヴァンの優勢に見えていた。けれど女は不安に駆られた。彼が黒猫から意識を外していることが、彼の致命傷になり兼ねない、と。女の危惧した通り、とびかかった黒猫によって崩された天秤は、それでもまだイヴァンに傾いていたけれど]───…っ!!![イヴァンの右腕が、漆黒の毛に覆われるその瞬間を目の当たりにして、息を飲む。思いもよらぬ光景への驚愕は、イヴァン自身の方が大きかったのだろう。出来た空白は、そのまま彼の終止符に成り代わった]