─工房『Horai』昨晩から今朝早くにかけて─
[結局、不安は晴れないまま、朝方近くまでギュンターからの依頼の品
銀の守り刀を作る事に専念していた。
装飾は殆ど必要ないからという注文だったため、
雛形に手を加えることはあまりせず。
ただ夫に意見されたとおり、その柄の根の中央に、丸い瑠璃を一つ埋め込み
蔦のような文様を絡ませた。
工房に入ったっきりだったのは、流石に夫に気づかれただろう。
こちらを伺うような気配に気づけば、
ひと段落着いた頃、作品を台の上に置き、手袋を脱いでそちらへ顔を向けた。]
ゼル。
[小さく名を呼べば、夫は心配そうにこちらの様子を伺いに中へと入ってきて。
誰の人目も無い場所だからこそ、座ったままこちらから、手を回して腰の辺りを抱きしめ、すりと、甘えるように頬をよせた。]