―昨夜:自宅―
[夫が自分を信じてくれているのは分かる。
それと同じくらいこの人は自分の能力も信じている。
…信じるしかないのだと理解しているからこそ、自分は夫を恨む事も、夫の選定から逃がしてくれと言う事も出来なかった。
他に選んだ者の名を聞けようはずもない。
力強い抱擁に、こちらも力を込めて返す。
二度とこうする事もないかもしれないと、そんな思いを拭い去るように。
明るく振舞う事は出来なかった。
それは痛々しくも見えるだろうし、何より自分と夫の事だけではない。
他の物の運命も絡んでいるのだ。
勤めるのは必要以上に暗くならない事だけだ。]