……え?[宿の裏手。場所的には、リネン室の外辺りか。そこに、不自然ないろを、見つけた。積もった雪と、外壁を染める、異質な黒ずみ。元の色はなんだったのか。それを物語るのは、立ち込める異臭]なに、これ……?[呟いて、見回す。腕に抱えた猫が、不安げに低く鳴く。翠が捉えたのは、黒ずんだ壁にもたれかかるよにして座り込む、見慣れた姿]……じい、さま?なに、してんの、そんなとこで。[掠れた声で呼びかけても、答えはない。近づいて、肩に触れる。伝わるのは、文字通り氷のような冷たさ]