[たしか、母から伯父の存在を聞いたその日の夜だったか。
珍しく母の静養についてきていた父が、自分を寝かせつけようと枕元にいた母に、声を掛けていた。
そのときは殆ど眠りかけていたから、父も母も、自分がまだ眠り切っていないとはきづいていなかったのだろうが。
話し声が聞こえれば、一時的には目が覚めて。こっそり両親の話に聞き耳を立てていた]
『お前の兄に会ったぞ』
『何処に居るかは教えられん。お前たちには教えぬと、そう約束したからな』
[思いっきり捻くれ者で性格も悪いが、約束した事は半分くらいは守る父は、その後も母に伯父の行方は教えなかったようだ。
なお、父が守る約束の半分は『数少ない信用する者と、その者に近しい者』と交わすものだけ。残る半分は、信用に値しない者と交わす、最初っから破るつもりでいるものだ]