……もう。
見もせず叩き落とすなんて。
[言葉のわりに目元と唇は楽しげに。
こちらはそうはいかないのだ。
苦無は、始まりを目で捉えなければ操作できない。
戦場に似つかわしくない水の清涼な香り。>>141
ただ音は激しく鼓膜を打ち、飛沫を感じさせるよう。
美結が避ける様は美しい体操の最中のようだ、なんて半分くらいは刹那の想像である。>>142
硬質な音に、物理的に苦無を防がれたと察する。
体の柔らかさは同等かもしれない。
彼女が防御に回っている間に詰めた距離、いつもなら刀を抜く頃だが、今回はそうしない。
毒の効かない鬼はそれでは倒せないから。
もっと確実に、執拗なまでに、動きを封じねば。]