[メーフィエという男が村に来たのは、丁度僕が薬師の真似事を初めて間もない頃だった。
今だって大したことはないけれど、当時はもっと簡単な塗薬であるとか、滋養薬のようなものを作っては提供していた。街で学ぶ金などないから全て独学だ。
そんな僕の元に毎日のように訪ねてきていたのが彼だ。
無数の傷をつけてきたこともあったし、足を挫いていたこともあった。
どうしたらそんなに怪我ができるのか不思議なくらいだった。
常連であった彼とは、いつしか仕事でない時にも顔を合わせるようになっていた。
一度酒を勧めたらすぐに酔い潰れてしまったから、以後はなるべく飲ませないようにはしたが。
彼の素性を尋ねたことはそう言えばなかったが、妻や娘の話になると分かりやすいくらいに表情が綻んでいた。相当愛しているのだろうことが伺えた。
だからこそ、己の腕の未熟さをあれ程に悔やんだことは無い。]